anone.one連載企画:お風呂の「当たり前」を疑う、第2回(結露・カビ篇)

下大利 楓
新しい設計や思想を聞くたびに「え、それ本当に快適なの?」と真っ先に引っかかってしまう、生粋のリアル目線担当。読者の一番近いところで一緒に首をかしげてくれるナビゲーター。趣味は花札。
白木原 悦子
クラシコアの建築思想や科学的合理性をバックボーンに持ち、Aの素朴な疑問を「よく見たら、こっちの方が圧倒的に美しいでしょ?」と鮮やかに解決していく知的ガイド。小さい頃の夢はお坊さん。

寒暖差ゼロのセンターコア。窓がない方がカビない科学的理由
下大利 楓:「防犯面の次は、やっぱり『湿気とカビ』の問題ですよね。窓がないと、どうしてもジメジメしてカビが生えやすくなるイメージがあるんですが……。」
白木原 悦子:「そこ、すごく気になるポイントだよね。でも実はこれ、科学的な仕組みを知ると『あ、むしろ窓がない(=家の真ん中にある)方が理にかなってるんだ!』って納得できるんだよ。」
下大利 楓:「科学的な仕組み、ですか?」
白木原 悦子:「そもそも、カビの大きな原因になるのが湿気と結露。そして結露って、なにから生まれるか知ってる?」
下大利 楓:「えっと……冬場に窓ガラスが水滴だらけになるやつですよね。たしか、室内の温かい空気と外の冷たい空気がぶつかる……『寒暖差』から起きるんじゃなかったっけ?」
白木原 悦子:「そう!大正解。つまり、外気に面した『外壁側』にお風呂があって窓がついていると、冬場なんかは外の冷気がダイレクトに伝わるから、室内との間にものすごい『寒暖差』が生まれる。その結果、盛大に結露してカビの温床になりやすいわけ。」
下大利 楓:「なるほど……! 外気と接しているからこそ、寒暖差で結露しやすくなると。」
白木原 悦子:「そうなんだよ。でも、クラシコアの設計みたいに、水回りを室内の真ん中(センターコア)にドンと配置するとどうなるか。お風呂のまわりが外気じゃなくて、同じように守られた0LDKの居住空間に囲まれることになるよね。」

下大利 楓:「たしかに! 外の冷たい空気に直接さらされないから、そもそも外壁側のお風呂みたいに激しい寒暖差が起きにくい……!」
白木原 悦子:「そう! 寒暖差が起きないから、結露がほとんど発生しない。 結果的に、カビの発生リスクを物理的にめちゃくちゃ低く抑えられるっていう、すごくロジカルで科学的なメリットがあるんだよね。」
下大利 楓:「『窓を開けて換気しなきゃカビだらけになる!』っていう思い込みがあったけど、そもそも寒暖差による結露を防ぐ構造にしていれば、窓を開ける必要すらなかったんだ……。」
あとがき
湯気の向こうにある、静かな温もり
冬の朝、起き抜けにリビングの窓ガラスを見ると、そこには決まってびっしょりと水滴がついていた。 カーテンをめくると、冷たいガラスからじっとりと湿った空気が伝わってきて、なんとなく一日の始まりが少しだけ重たく感じられたりする。私たちはいつの間にか、そんな「寒暖差がもたらす結露」や、そこから忍び寄る黒いカビの気配と、戦うことが当たり前になっていた。
お風呂はジメジメしていて当然。窓を開けて空気を入れ替えなければ、すぐに汚れてしまうもの。 そう思い込んで、私たちは毎日のように換気扇を回し、見えない敵と戦い続けてきた。
けれど、ふと立ち止まって考えてみる。 もし、お風呂が外の冷たい空気と背中合わせになっていなかったら。家の真ん中で、同じ温度の優しい空気にそっと包まれていたなら。 そこには、激しい寒暖差も、あの嫌な結露も生まれない。ただ、静かで、いつでも清潔な時間が流れている。
家の中央にぽっと灯る、あたたかな繭(まゆ)のような場所。 それは外の世界の冷たさや激しさから私たちをそっと守ってくれる、小さなシェルターのようでもある。
「窓がないこと」は、決して何かを閉じ込めているわけではなくて、余計な冷気や不安を遠ざけ、本当に心地よいものだけをそばに置くための、やさしい知恵なのだと思う。
そう気づいたとき、胸のなかがふっと軽くなった。
次回の第3回は、「換気」という言葉の裏に隠された、ちょっと意外なお話です。
(吉田二毛作)